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2016年01月21日

っきりと晴れ渡

 道祖神は、夫婦和合の神様であると共に、村に侵入する魔物を追い払い、村からこっそり抜け出す三尸の虫に対して「見ざる、言わざる、聞かざる」と、戒めるのだ。

 道祖神とは、猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)と天宇受売神(あめのうずめのかみ)の夫婦神様で、三猿は夫婦の神様にお仕えする猿である。 

 浅吉には、帝釈天に知られてはならない性癖があった。当時の社会通念では「悪癖」とされた自慰行為が止められないのだ。世間体では真面目な働き者で通っていた彼であるが、夜床に入ると独り者の寂しさが伴って、ついつい右手が動いてしまう。彼は罪悪感に苛まれていたと同時に、三尸の虫によりこのことが帝釈天に伝わり、寿命が刻々と縮まっていく恐怖に慄いていた。

 ある夜、彼の夢枕に美しい女の神、天宇受売神がお立ちになった。
  「神様、どうぞお許しください」
  「浅吉、なにも恐れることはありませんよ」
  「でも、私は罪を犯しています」
  「いいえ、そなたは何も罪など犯してはいません」
 天宇受売神は優しく微笑んで続ける。
  「それは、自然のことなのですよ、安心なさい」
 天宇受売神は、故意か偶然か衣の裾をはらりと捲って、「うふん韓國酒店推介」とウインクすると、スーッと消えてしまわれた。

 翌朝、浅吉の褌はぐっしょりと濡れて気色が悪かったが、心はすっていた。
  「そうだ、今年は猿田彦神社にお参りしよう」
 思い立った浅吉は、生来の器用さで木彫りの男根型道祖神を彫り、奉納しようと考えた。

 そんな浅吉の元へ、天宇受売神よりも、もっと美しい嫁が嫁いできたのは、数年後のことであった。 まだ明け遣らぬタクシー会社の待機室で、真っ青な顔の三人の男張琛中醫がヒソヒソ話し合っていた。 
  


Posted by yigdfda at 12:56Comments(0)

2016年01月15日

客やあらしませ


 三太と辰吉は、腹がたった。憎む相手を陥れるために、罪のない相模屋の店主から金を騙し取るとは、造り酒屋の信用問題にもなりかねない何とも卑劣な手段を取る男なのだと、勝蔵が気の毒になった。
 父である先代が考えた末に、作造と勝蔵のどちら如新に後を継がせるかを決めたのであり、勝蔵を選んだのにはそれなりの理由があったのだろう。
 三太と辰吉は、近所の造り酒屋に寄り、横綱酒造の作造と一緒に辞めた杜氏の消息を尋ね歩いた。いや、尋ね歩く必要はなかった。最初に尋ねた店で、すぐに分かったからだ。
   「大きな声では言えませんが、作造さんは追い出されたのでっせ」
 勝蔵の話では、勝手に出て行ったと言っていた。近所の噂では、追い出されたと言う。噂というものは、尾鰭が付いて歪曲するのだ。噂話はそこそこに聞いて、棲家だけをしっかり訊いてきた。
 作造は一緒に辞めた独り者の杜氏の家に転がり込んで、そこから二人共小さな造り酒屋に通いの杜氏兼店の使用人として働かせて貰っているのだそうである。
   「お邪魔します」
   「へい、いらっしゃいませ」
 出てきたのは、人の良さそうな白髪の老人だった。
   「今年は美味しい酒が出来ました、先ずは試飲をどうぞ」
 酒器専用の棚から小さな杯を二つ取り出した。
   「済んません、わいらは酒を買いに来搬屋服務たん、ちょっちお聞きしたいことがおまして…」
   「そうだしたか、それはどうも早とちりでした」
 それでも、酒を注ぐ手は止めなかった。
   「ここで作造さんという方が働いていると聞きまして…」
   「へえ、作造坊ちゃんは、奥においででおます、お呼びしてきますので、これを飲んでお待ちください」
 老人が奥に入ると、直ぐに歳を取った男と若い男が前垂れを外しながら出てきた。
   「お待ちどうさまでおます、私が作造で、こちらが横綱酒造で杜氏をしていた文吉ですが、どちら様でいらっしゃいます?」
   「大坂の酒店相模屋の番頭ですが」と頭を下げ、三太は詐欺の経緯から、横綱酒造で聞いてきたことを全て話した。  


Posted by yigdfda at 13:05Comments(0)