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2016年02月24日

巡りさんに走


 翌日の放課後、悠斗を家まで送り一旦施設に戻った文太は、施設の職員に外出の許可を得た。
   「松本組の事務所へ行ってきます」 
 もしものことを考えて告げたのである。
   「何の用があって…」
 不審がる職員を尻目に飛び出していった。松本組の事務所の前はよく通るし、黒いスーツの男が大勢出入りするところも幾度か目撃している。事務所は間口の狭い五改變自己階建てのビルの一階である。入り口は全開で、男が三人立っていた。
 文太はクリクリ頭をピョコンとさげると、
   「ここに、賢さんというお兄さんがいますか?」と、尋ねてみた。 
   「おう、賢の知り合いか?」
   「はい、ちょっと… 親分にお願いがあって来ました」
 男は、文太の体を舐めるように見て、刃物など持っていないのを確認した。
   「中へ入って待っていろ」
 言い残して男は階段を昇っていった。文太はその間事務所内を見回していたが、考えていたのと様子が違って、ただのオフィスだった。組の事務所といえば、入り口正面に神棚があり、神棚の両端に榊差しがあり、天上からズラッと提灯ぶら下がっている「ごくせん」の大江戸組を想像していたからだ。
 しばらくして、親分らしき男が下りてきた。
   「儂に逢いたいというのはこの兄ちゃんか?」 
 一緒に下りてきた男に尋ねた。
   「へえ、何でも賢の事で親分にお願いがあるとかで」
   「ほお、兄ちゃんどんなことだ、言ってみな」
   「僕は高倉文太と言います、賢さんに中学生を虐めるのを止めるように言って下さい」
   「賢が中学生をいじめているのか? かっこ悪い奴だな」
 親分は男に賢を呼びに行かせ、ソファーにどっかと座ると、文太にここへ来て座れとソファーを指さした。賢が下りてきた。
   「親分、何か?」
 言いかけて文太を見て足を止めた。
   「賢、お前中学生を虐めているのか?」 住宅街にある交番の前に、5~6才の男の子が立っていた。目がクリッとしていて、如何にも賢明そうな顔立ちである。パトロールから戻ってきたおり寄って、大切そうに固く握り締めていた手を開いて見せた。
   「お金拾いました」
 はきはきとした言葉で告げると、汗でぐっしょり濡れた10円玉眼睛疲勞を差し出した。公園で遊んでいて見つけたという。警察官は優しい笑顔で10円玉を受け取ると、
   「ありがとうね」
 と、男の子の頭を撫でて、
   「今、受取書を書くからちょっと待っていてよ」 
 文太を椅子に座らせると、奥の部屋に入っていった。
  


Posted by yigdfda at 12:55Comments(0)