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2017年07月03日

小さかりのな

母ちゃんは、元々しがらみや世間体などに囚われる事はなかったが、父ちゃんを亡くしてから、奔放っぷりにもっと拍車がかかっていた。
いずれ、自分のほうが先にいなくなるのだから、悔いのないように生きるんだよと、母ちゃんは俺と詩鶴の頭を同時に抱いた。
抱えられて俺たちは、目を見交わしてちょっと涙ぐんでいた。
ささやかな祝福が嬉しかった。
母ちゃんがコンクールに出品した義経主従は、一次審査で海外の審査員に高い評価を受けたらしい。
小さな人形の詩鶴は、ほんの少し小首を曲げて、弁慶の胸に寄り添っていた。
初めて信頼できる人に出会ってやっと安堵した、まだ幼い遮那王と呼ばれていた頃の姿だ。

毎朝、詩鶴が俺を起こしに来る。
その人の話の意味は、子供の天音にはわからなかったが、ふと思いついて天音は口にした。
「ぼくね、冬休みに北海道へ行ったんだよ。」
「そのときね、鶴のダンスを見たの。鶴もね、歌うんだよ。」
「鶴が????歌うの?」
優しい笑みを浮かべた人は、小首をかしげてじっと天音の次の言葉を待っていた。
「詩津さんの詩って、うたうっていう意味もあるんだよね。」
綺麗な人は、小さく頷いた。
「だからね、詩津さんの名前から一字もらって、詩鶴ってどうかな?」
「詩鶴????」
「うん。求愛のダンスを踊る時に、大好きって歌うってお父さんに聞いたよ。白い息に、朝日が当たって赤く見えるんだ。」
「変かな?」
「詩鶴???。」
母の苛立ちは、いつも詩鶴にだけ向かっていたように思う。
以前にも可哀想なことがあった。
少しでも母親に詩鶴を良い子だと思ってもらえるように、天音は甲醛母親の誕生日を詩鶴に教えたのだ。
「おばさまの、お誕生日?」
「ああ。詩鶴も、何かプレゼントあげる?」
「うん。ぼく、お花の首飾り作る!」
「じゃあ、病院の裏側の田んぼのあぜ道に行こうか?」
「うん!」
「お兄ちゃん。ぼくね、保育園で一番、長いのを作れるんだよ。
「そうか、すごいな詩鶴。」
後になって、天音は深く後悔する。
二人に大人の事情が分かるはずもなく、その日を境に5歳になったば詩鶴の顔からは笑顔が消えた。
めかし込んだ母は、車中の人となった。
歌舞伎を観劇するのだという。
天音は、めったに出かけようとしない母が出かけるのを待っていた。
「詩鶴!」
広い母屋のエントランスから声を掛けると、階段の上から詩鶴の顔がぴょこんと覗いた。
「天音お兄ちゃん????」
天音の背後に視線を廻らせる詩鶴に、手を大きく浸大工商管理広げて声を掛けた。
「おいで!おばさまは、お出かけしてしまったよ。」
「お兄ちゃんと、一緒に遊ぼう!」



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